大型ハイテク株はポンカス

ジェレミー・シーゲルの名著『株式投資の未来』に、彼の名声を高めた名文句がある。それが表題にある「大型ハイテク株はポンカス」だ。但しこれは、日本語に訳された文句であり、原文ではどう書かれているかは知らなかったので、調べてみた。

Big-Cap Tech Stocks are a Sucker Bet

英語の原文ではこう書かれているようだ。「Sucker」はsuckの変形で、所謂スラング(罵り言葉)の一種だ。直訳では「吸う」となるが、スラングでは「むかつく、うんざりする」等の蔑むような意味らしい。だから「Sucker Bet」で「馬鹿者の賭け」みたいな感じになる。

日本では一部のジャンク債(※注)を「ポンカス債」という俗称で呼ばれている。だから日本語訳に当てられる際、Suckerがポンカスと言い換えられたのだろう。普通に訳すなら「大型ハイテク株はジャンク」位が適当だが、ポンカスと言い換えた方がよりインパクトがあるわな。翻訳者はGJ【GoodJob=良い仕事をした】だと思う。

ちなみにSucker Betというのは、シーゲル自身が付けた表題ではなく、寄稿したWSJ(ウォールストリートジャーナル)の主筆に勝手に書き換えられたものだそうだ。確かに結果的には、この刺激的なタイトルと、その後のITバブルの崩壊により、シーゲルの名声を高めたことになる。しかし、マスメディアが大衆の注目を集める(=売上を増やしたい)為に、煽りや捏造を加えることは万国共通なようだ。

※注:具体的には、ワラント債から新株予約権を切り離した社債部分だけのことを「ポンカス債」と呼ぶ。ワラント(担保部分)が無いのに、普通社債よりも利息が低いことが多い為。